ど、それだけ家の者にたいしてはいっそう冷酷になっていった。家の者のことはろくに考えもせず、無作法な口のきき方をし、厭な眼付で眺めていた。二人にとっては、その親切はあまりに満ち満ちた愛情の結果にすぎなかった。その愛情は発作的にあふれ出して、だれでもぶっつかった者に利を与えるのだった。そしてその発作を除いては、二人は平素よりもいっそう利己的になっていた。二人の頭はただ一つの考えに満されていて、すべてがそこに帰着するからであった。
 この少女の面影は、クリストフの生活のうちに、いかに大なる場所を占めていたことだろう! 庭に彼女の姿を捜し求めて、小さな白い長衣を遠くに見出す時――劇場で、まだ空いている彼女ら二人の席から数歩のところにすわっていて、桟敷《きじき》の扉が開くのを聞き、よく知りぬいているあでやかな声を耳にする時――まったく無関係な話の中に、ふとケリッヒというなつかしい名前が出てくる時、彼はいかに感動したことであろう! 彼は蒼《あお》くなりまた赤くなった。しばらくの間は何にも聞こえも見えもしなかった。その後ではすぐに、血の激流が全身に湧き上がり、言い知れぬ力が躍《おど》りたってくるので
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