節をくり返してひき、それに感動して顔色を失い冷たくなっていた。シューマンの音楽を聞くと涙を流した。万人にたいする憐れみと親切とで心がいっぱいになってる気がしていた。そして彼もまた彼女と同じ心地であった。二人は貧しい者に出会うと、ひそかに施与をして、同情にたえない眼付をたがいにかわした。親切にしてやるのが嬉しかった。
ほんとうをいえば、彼らは間歇《かんけつ》的にしか親切ではなかったのである。ミンナは、母の子供のおりから家で働いている老婢《ろうひ》フリーダの献身的な卑しい生涯が、いかにあわれなものであるか、突然気がついた。そして彼女のところへ駆けて行って首に抱きついた。台所でシャツを繕《つくろ》っていた老婢は非常にびっくりした。それでもミンナはやはり、二、三時間もたてば、呼鈴を鳴らしたのにフリーダがすぐにやって来なかったからと言って、荒々しい言葉を使った。またクリストフの方も、あらゆる人間にたいする愛情で胸をせつなくし、一匹の虫をも踏み潰《つぶ》さないようにとよけて通っていたのに、自家の者たちにたいしては冷淡きわまっていた。奇怪な反動ではあるが、あらゆる他人にたいして情け深くなればなるほ
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