かむかしていた。彼女はちょっと待ったが、それから不満な調子で言った。
「ハンケチを拾ってくださいませんの?」
クリストフはもう我慢しきれなかった。
「私はあなたの召使じゃありません。」と彼はぞんざいに叫んだ。「自分でお拾いなさい。」
ミンナは息がつまった。にわかに腰掛から立ち上がった。腰掛は倒れた。
「あんまりだわ。」と彼女は言いながら、腹だたしく鍵盤をたたいた。そしてひどい勢で室から出て行った。
クリストフは彼女を待った。彼女はもどって来なかった。彼は自分の行ないが恥ずかしかった。無頼漢みたいなことをしたと感じた。で彼は進退きわまった。彼女からはあまりに厚かましい嘲弄を受けていたのである。彼はミンナが母親に訴えはすまいかと恐れた、ケリッヒ夫人の心が変わってしまいはすまいかと恐れた。彼はどうしていいかわからなかった。自分の乱暴を後悔はしていたが、許しを乞う気にはどうしてもなれなかった。
翌日彼は、ミンナが稽古《けいこ》を受けることを拒むかもしれないと考えてはいたけれど、とにかくまたやって来た。しかしミンナは、高慢な心からだれにも言いつけなかったし、もとより多少良心にやましい点が
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