が》い、その憤りを面白がった。退屈をまぎらすために、いろんな馬鹿な策略を考えついて、稽古の邪魔をしクリストフをいじめようとばかりした。気をもませるために息づまった真似をした。またはやたらに咳《せ》き込んだり、あるいは女中に大事なことを言い忘れてるなどと言った。クリストフはそれを狂言だと知っていた。ミンナはクリストフにそう知られてることを知っていた。そして彼女はそれを面白がった。なぜなら、クリストフは自分の思ってることを彼女にそう言うことができなかったから。
 ある日、彼女はそういう気晴らしをまた始めて、切なそうに咳をつづけ、顔をハンケチに埋め、あたかも息がつまりかけてるようなふうをした。そしていらだってるクリストフを横目で窺《うかが》っていた。その時彼女は、ハンケチを落してクリストフに拾わしてやろうと、うまいことを考えついた。クリストフはこの上もなく無愛想な様子で拾ってやった。彼女は貴婦人ぶった「ありがとう!」の一言をそれに報いた。彼はも少しで怒鳴り出そうとした。
 彼女はその戯れをたいへん面白いと考えて、なおくり返そうとした。そして翌日それをやった。クリストフは動かなかった。憤りにむ
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