の限られた狭い生活のうちにあっては、その話は重大な出来事だったので、彼はそれがたいへん気にかかった。そして仕事に出かけながらも、父の例のおおげさな話に従って、その不思議な家の主人公たちを想像してみようとした。それから仕事に心を奪われて、すっかり忘れてしまった。けれどもその夕方、家にもどる間ぎわに、すべてのことがまた頭に浮かんだ。すると好奇心に駆られて、例の眺め場所に上り、壁の中がどういうふうになってるか覗《のぞ》いてみた。ところが眼にはいるものはただ、静かな庭|径《みち》ばかりで、そこにはじっと動かない木立が、太陽の名残の光のうちに眠ってるがようだった。しばらくすると彼は、好奇心の的をすっかり忘れてしまって、しみじみとした静けさのうちに浸っていった。その妙な位置は――標石の頂上に不安定に身を保って立つのであるが――彼の夢想には上乗の場所であった。空気のよく通わない薄暗いきたない路次から出ると、その日向《ひなた》の庭は夢幻的な輝きを帯びてるようだった。彼の精神はそのなごやかな場所のうちに漂っていった。種々の音楽が歌っていた。彼はその音楽のうちにうとうととした……。
 かくて彼は、眼も口も
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