ならずその門のそばに立ち止まって、その快い空気を吸った。そして息臭い自分の室にもどるのが厭になった。彼はまた幾度も、ケリッヒ家の表門の前の、舗石に草のはえてる小さな広場で、遊んだ――遊ぶ時には――ことがあった。門の左右には、マロニエの老樹が一本ずつ立っていた。祖父もその根本にやって来て、パイプを吹かしながらすわった。そして子供たちには、木の実が弾丸や玩具《おもちゃ》となった。
ある朝、彼はその路次を通りかかって、いつものとおり標石によじ上った。ぼんやり眺めた。そしてまた降りようとした時、何か事変わった感じを受けた。彼は家の方へ眼を向けた。窓は皆開かれていた。日の光が家の中までさし込んでいた。人の姿は見えなかったが、その古い住宅は十五年間の眠りから覚《さ》めて微笑《ほほえ》んでるように思われた。クリストフは変な気持になりながら家に帰った。
食事の時に父は、近所の噂《うわさ》の種となってることを話した。驚くほどたくさんの荷物をもって、ケリッヒ夫人と娘とがやって来た、ということだった。あのマロニエのあたりは、馬車の荷降ろしを見に来た好奇者《ものずき》でいっぱいだったそうである。クリストフ
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