だ径《みち》や、荒れた牧場のような芝生《しばふ》や、乱雑にこんがらかってる木立や、いつも雨戸が閉《し》め切ってある家の白い正面などが、見られた。年に一、二回、植木屋が見回りに来て、家に風を通した。しかしその後で庭はまた自然のままになって、すべてが静寂にとざされるのであった。
 その静寂にクリストフは心打たれた。彼はしばしばその眺め場所に人知れず上った。大きくなるにしたがって、眼が、次には鼻が、次には口が、壁の頂までとどくようになった。今では、爪先《つまきき》で伸び上がると、両腕を壁越しに差出すことができた。そういう姿勢は楽ではなかったが、彼は長くそのままの姿で、壁に頤《あご》をのせ、じっと眺めまた聴《き》いていた。夕《ゆうべ》の光は芝生《しばふ》の上に穏かな金色の波を注ぎかけ、その波は樅《もみ》の木立の影では、青みがかった反映に輝いていた。彼は街路をやって来る人の足音が聞えるまで、われを忘れてそこにぼんやりしていた。夜分には、庭のまわりに種々な香《かお》りが漂っていた、春はリラの香り、夏はアカシアの香り、秋には枯葉の香りが。クリストフは晩に宮邸から帰ってくる時、どんなに疲れていても、か
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