「そんな奴がおれに何の関係があるんだ?」
 そしてオットーが気を悪くして、なお言いつづけようとした時、クリストフは荒々しくその言葉をさえぎって、向うのある地点まで駆けっこを強《し》いた。
 彼らはその午後じゅう、もはやこの問題に触れなかった。しかし、二人の間には珍しいことであるが、とくにクリストフにおいては珍しいことであるが、馬鹿丁寧さを装って、冷やかに争っていた。クリストフの喉《のど》には言葉がまだつまっていた。ついに彼は我慢ができなくなって、五歩ばかり後からついてくるオットーの方へ、途中でふり向いて、激しく彼の手を取り、一度に言ってのけた。
「オットー、いいかね、ぼくは君がフランツとそんなに仲よくするのを好まないんだ。なぜって……それは、君がぼくの友だからだ。君がだれかをぼくよりいっそう愛するのを、ぼくは好まないんだ。ぼくは厭《いや》なんだ。ねえ、君はぼくのすべてなんだ。そんな……できないはずだ、いけないはずだ。もし君がぼくのものでなくなったら、ぼくはもう死ぬよりほかないだろう。ぼくはどんなことをするかわからない。自殺するかもしれない。君を殺すかもしれない。いや、勘弁してくれ!…
前へ 次へ
全221ページ中105ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング