…」
彼の眼からは涙がほとばしっていた。
オットーは、その脅《おびや》かすように唸《うな》ってる苦しみの真面目《まじめ》さに、感動しまた恐れて、急いで誓った、クリストフほど深くはだれも愛してはいないし、また将来決して愛しはしない、フランツは自分にとってなんでもない、もしクリストフがそう望むならもう決してフランツに会いもすまいと。クリストフはそれらの言葉を飲み込んで、心がまた生き返ってきた。笑みを浮べ、激しい息をついた。彼はオットーに真心から感謝した。自分の乱暴を恥じた。しかし非常に重苦しい胸は和《やわ》らいだ。二人は向き合って、手を取り合いながらじっとつっ立って、たがいに顔を見合った。たいへん嬉《うれ》しく、またたがいの身をはじらっていた。彼らは黙って帰りかけた。それからまた話しだして、ふたたび快活な気分になった。かつて知らなかったほどひしといっしょに結び合わされたのを感じていた。
しかしこの種のことは、それが最後のものではなかった。今やオットーはクリストフにたいする自分の力を感じたので、それをみだりに使おうとした。彼は急所を心得ていて、そこを突つきたくてたまらなかった。しかしそ
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