とクリストフはまた言った。
 オットーは話題を変えてもかまわなかったので、嘴《くちばし》で木をつついてる一匹の小鳥をさし示した。二人は他のことを話した。十分ばかりしてから、クリストフはまた突然言い出した。
「君たちは気が合うのかい?」
「だれと?」とオットーは尋ねた。
(だれとだか彼にはよくわかっていた。)
「従弟とさ。」
「ああ合うよ。どうして?」
「いやなんでもないんだ。」
 オットーはいつも悪い冗談でからかわれるので、従弟をあまり好まなかった。しかし妙な意地悪な本能から、やがてこうつけ加えて言った。
「たいへんやさしいよ。」
「だれが?」とクリストフは尋ねた。
(だれがだか彼にはよくわかっていた。)
「フランツさ。」
 オットーはクリストフの言葉を待った。しかしクリストフは聞こえなかったようなふりをしていた。榛《はん》の枝を杖に切っていた。オットーはまた言った。
「面白い奴だよ。いつでもいろんな話を知ってるよ。」
 クリストフは平然と口笛を吹いた。
 オットーはますます言いつのった。
「そして実に頭がよくて……上品で……。」
 クリストフは肩をそびやかした。こう言うがようだった。
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