親しく談笑していた。クリストフは蒼《あお》くなって、彼らが街路の曲り角《かど》に見えなくなるまで、その後を見送った。彼らは少しもクリストフの姿に気づかなかった。クリストフは家に帰った。一片の雪が太陽の面をかすめたようなものだった。すべてが薄暗くなった。
次の日曜に会った時、クリストフは初めなんとも言わなかった。しかし三十分ばかり散歩した後に、彼はしぼるような声で言った。
「水曜日に、君をクロイツ街で見かけたよ。」
「そう!」とオットーは言った。
そして彼は赤くなった。
クリストフはつづけて言った。
「君は一人じゃなかったね。」
「ああ、」とオットーは言った、「いっしょだった。」
クリストフは唾《つば》をのみ込み、平気を装った調子で尋ねた。
「あれはだれだい?」
「従弟《いとこ》のフランツだ。」
「そうか。」とクリストフは言った。
それからちょっと後にまた言った。
「君は従弟《いとこ》のことをぼくに話したことがなかったね。」
「ラインバッハに住んでるんだ。」
「たびたび会うのかい。」
「時々こっちへやって来るよ。」
「そして君も、向うへ行くのかい。」
「時々だ。」
「そうか。」
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