くを裏切るようなことがあったら、ぼくは君を犬のように打ち殺してしまってやる!」
「わが心よ、君はぼくを迫害するのか!」とオットーは悲嘆した。「君はぼくに涙を流させる。ぼくはこんな目に会う覚えは少しもない。しかしなんでも君の言うままになろう。君はぼくにたいしてあらゆる権利をもっている。もし君がぼくの魂を破壊するにしても、ぼくの魂の一片は、君を愛するために永く生きているだろう!」
「天の神よ!」とクリストフは叫んだ、「ぼくは友を泣かした!……ぼくをののしってくれ、ぼくを殴ってくれ、ぼくを踏みにじってくれ! ぼくは惨《みじ》めな人間だ。ぼくは君の愛に価しない!」
 二人は、なんでもない他人に書き送る手紙と自分たちの手紙とを区別するために、宛名《あてな》の書き方に特別なくふうをこらしていたし、また切手をはるにも、封筒の下部の右の隅《すみ》に、逆さに斜めにはりつけることにしていた。そういう子供らしい秘密は、彼らにとって、愛の楽しい神秘の魅力をそなえていた。

 ある日|出稽古《でげいこ》からの帰り道に、クリストフはオットーが同じ年ごろの少年と連れだってるのを、次の街路に見かけた。彼らはいっしょに
前へ 次へ
全221ページ中102ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング