れた。祖父の家に止まっていたり、あるいは何かの用事で夕方そこに使にやらされたりすることがあった。老クラフトの住んでる家は、少し町の外になっていて、ケルン街道の最後の家だった。その家と町はずれの明るい窓との間は、二、三百歩の距離だったが、クリストフにはその三倍もあるように思われた。道が曲がっていて、しばらく何にも見えないところがあった。夕暮のころ、田野は寂《さび》しかった。地面は黒くなり、空は気味悪い青白さになっていた。街道の両側にある藪《やぶ》から出て、土堤によじ登ると、まだ地平線のほとりに黄色い輝きが見えていた。しかしその輝きは少しも物を照らさないで、夜の闇《やみ》よりもいっそう人の心をしめつけた。その輝きのために周囲の暗さがいっそう陰気になっていた。それは終焉《しゅうえん》の光だった。雲は地面とほとんどすれすれに降りていた。藪は大きくなってざわついていた。骸骨《がいこつ》のような樹木は変な格好の老人に似ていた。道の標石は仄《ほの》白い反映を返していた。影が動いていた。溝の中にはじっとすわってる一寸法師がおり、草の中には光があり、空中には恐ろしい羽音がし、虫の鋭い鳴声がどこからともな
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