、眼を挙げることもしかねた。二人の子供は数歩のところにじっと立って、彼を頭から足先まで見回し、肱《ひじ》でつっつき合って、嘲《あざけ》っていた。がついに思いきって、なんという名前か、どこから来たか、父親は何をしているか、などと尋ねだした。クリストフは堅くなって何にも答えなかった。彼は涙が出るほど気圧《けお》されていた。とくに、金髪を編んで下げ、短い裳衣《しょうい》をつけ、脛《すね》を露《あら》わしてる少女のために、ひどく気圧されていた。
 彼らは遊び始めた。そしてクリストフが少し安心しだした時、男の子は彼の前に立ちはだかって、彼の上着に手をふれながら言った。
「やあ、これは僕んだ!」
 クリストフには訳が分らなかった。自分の上着が他人のだというその言葉に憤慨して、彼は強く頭を振って打消した。
「僕はよく知ってる。」と男の子は言った。「僕の古い紺《こん》の上着だ。そら汚点《しみ》がある。」
 そして彼は汚点のところを指でつっついた。それからなお検査をつづけて、クリストフの足を調べ、靴《くつ》の先がなんで繕ってあるかと尋ねた。クリストフは真赤になった。女の子は口をとがらして、貧乏人の子だと
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