兄に――クリストフにも聞えた――ささやいた。クリストフはその言葉にまたむっとした。そして、人を侮辱したその考えをやっつけてやろうと思って、むちゃくちゃに声をしぼって言いたてた、自分はメルキオル・クラフトの子で、母は料理番ルイザであると。――そういう身分は他のどんな身分にも劣らずりっぱだと彼には思えたのであるし、またそれが正当だったのである。――しかし他の二人の子供は、もとよりその報告を面白がっていて、彼を前よりも重んずるようなふうは見えなかった。かえって主人らしい調子をとった。将来何をするつもりか、やはり料理人か御者かになるつもりなのかと、そんなことを彼に尋ねた。クリストフはまた黙り込んだ。胸を氷で貫かれたような気がした。
彼が黙り込んでるのに力を得て、二人の金持ちの子供は、突然この貧乏な子供にたいして、子供にありがちな無理由の残酷な反感を懐《いだ》いて、彼をいじめてやる面白い仕方はないかと考えた。女の子の方がとくに熱心だった。クリストフが窮屈な服を着てるので楽には走れないことを見てとった。そして障害物を飛び越させるといううまいことを思いついた。そこで、小さな腰掛で柵《さく》をこしら
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