任していた。エルンストはつまらないことにもわめきたてた。じだんだふんだり、怒って転がり回ったりした。神経質な子供だった。でルイザは、彼の気に障《さわ》ることをしてはいけないと、クリストフに言いつけておいた。ロドルフの方は猿《さる》知恵のたちだった。クリストフがエルンストを抱いてる隙《すき》につけこんでは、いつもその後ろに回ってあらんかぎりの悪戯《いたずら》をした。玩具《おもちゃ》を壊《こわ》し、水をひっくり返し、着物をよごし、また戸棚の中をかき回しては皿を落したりした。
 そういうふうだったから、ルイザは家にもどってくると、クリストフをねぎらいもしないで、乱雑なありさまを見ながら、叱《しか》りつけはしないが顔を曇らして、彼に言った。
「困った子だね、お守《も》りが下手《へた》で。」
 クリストフは面目を失って、しみじみと心悲しかった。

 ルイザはわずかな金の儲《もう》け口も見逃さなかったので、婚礼の御馳走《ごちそう》だの洗礼の御馳走だのという特別の場合には、やはりつづけて料理女として雇われていった。メルキオルはそれを少しも知らないようなふりを装っていた。なぜなら自尊心を傷つけられるこ
前へ 次へ
全221ページ中64ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング