や、またどんなに不安定で変なものであろうと何か高いものがあれば、その上に腰を下した。そして小さな足をぶらぶら動かしながら、小声で歌ったりぼんやり考え耽ったりした。あるいはまた仰向《あおむけ》に寝転んで、雲の飛ぶのを眺めた。雲は、牛や、巨人や、帽子や、婆さんや、広々とした景色など、いろんな形に見えた。彼はそれらの雲とひそかに話をした。小さな雲が大きいのにのみ込まれようとするのを見ては、あわれみの念を起こした。またほとんど青いとさえ言えるほど真っ黒なのや、非常に速く走るのを見ては、恐ろしいように思った。それらの雲が人生にも大きな場所を占めてるように思われた。そして祖父や母がそれに少しも注意を払わないのが、不思議でたまらなかった。もし悪を働く意志をもってたら、恐ろしい者となるに違いなかった。が幸いにもそれらは、人のよい多少おどけたふりをして通りすぎて、少しも止まらなかった。子供はあまり見つめていたので、しまいには眩暈《めまい》がしてきた。そして空の深みへ落ち込みかかってるかのように、手足をわなわな震わした。眼瞼《まぶた》がまたたいて、眠気がさしてきた……。静寂……。木の葉が日に照らされて、静
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