やぶ》に隠されてだれからも見られなくなると、にわかに様子を変える。まず立止まっては指を口にくわえて、今日はどういう話をみずから語ろうかと考える。頭の中にいっぱい話をもってるのである。もとよりその話はどれも皆似寄ったもので、また三、四行で書き終えられるくらいのものである。彼はそのどれかを選ぶ。たいていはいつも同じ話をとり上げて、それを前日話し残したところからやりだすか、または違った趣向をたてて初めからやりだす。新しい話の筋道を考え出すには、ごく些細《ささい》なことで十分である、ふと耳にした一言で十分である。
偶然の事柄からいつもたくさんの思い付が出てきた。垣根のほとりに落ちてるような(落ちていなければ折り取ってしまうのだが)、ちょっとした木片や折枝などから、どんなものが引き出されるかは、人の想像にも及ぶまい。それらのものは妖精《ようせい》の杖《つえ》であった。長いまっすぐなものは、鎗《やり》になったり剣になったりした。それを打振りさえすれば、多くの軍隊が湧き出した。クリストフはその大将で、先頭に立って進み、模範を垂れ、斜面を進撃して上っていった。枝がしなやかな時には、鞭《むち》になった
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