ったりした。なぜなら彼は、抱擁されることが嫌いだったし、許しも求めないで人を勝手に取扱うことが容認できなかったのである。
 ついに彼らは家に着いた。戸を締めるやいなや、メルキオルは彼を「馬鹿小僧」と呼びだした。トリオは自分のでないと話したからであった。子供は、それを話したのは賞賛にこそ価すれ、非難をされるいわれのないりっぱな行ないであると、みずからよく知っていたので、むっとして粗暴な言葉を言い返した。メルキオルは腹をたてて、あれらの楽曲が相当によく演奏されてなかったら殴《なぐ》りつけるべきだが、しかしそのよくできた音楽会の効果も彼の馬鹿な一言のために台なしになったと言った。クリストフは正義にたいする深い感じをもっていた。彼は隅《すみ》に引込んでふくれ顔をした。父も大公爵令嬢もすべての人を、軽蔑の中に一くるめにした。また近所の人たちがやって来て、家の者にお祝いを言いいっしょに談笑したのも、癪《しゃく》にさわった。あたかも、楽曲を弾奏したのは家の者たちであり、彼自身は彼ら皆の玩具《おもちゃ》のような調子だった。
 そのうちに、宮廷から一人の使いが来て、大公爵からの美しい金の時計と、若い令嬢
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