ちから、家計簿の紙をもぎ取り、四分音符や八分音符を一生懸命に書きちらした。しかし、自分の考えてることを知るために、またそれをはっきり書き現わすために、非常に骨折っていたので、ついには、何かを考えようとする時以外には、もう何も考えなくなってしまった。それでも彼はやはり楽句を組立てようと力んでいた。そして彼はもとより音楽家だったから、まだなんの意味をもなさないものではあったがともかくも楽句をこしらえ出した。すると彼は揚々としてそれを祖父のもとへもって行った。祖父は嬉《うれ》し涙を流した――彼はもう年を取ったので涙もろかった――そして素敵なものだと言ってくれた。
 彼はまったく甘やかされて駄目《だめ》になるところだった。しかし幸いにも、生まれつき聡明な性質は、ある一人の男の影響に助けられて、彼を救い上げた。その男の方では、だれかに影響を与えようなどとはみずから思ってもいなかったし、だれの眼から見ても着実の見本にしかすぎないのであった。――それはルイザの兄であった。
 彼はルイザと同じく小柄で、痩《や》せて、ひ弱で、少し猫背《ねこぜ》だった。年齢はよくわからなかった。四十歳を越してるはずはなか
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