こにすわって、シャツの袖《そで》で汗ばんだ顔を拭《ふ》いた。時とすると彼は、弟のロドルフを突っついて起こそうとした。しかし弟は何かぶつぶつ言いながら、夜具をすっかり自分の上に引きよせて、またぐっすり眠ってしまった。
 彼はそういうふうにして、熱っぽい悩みのうちにとらえられていると、ついに蒼白《あおじろ》い一条の光が垂幕の裾《すそ》の床《ゆか》の上に現われた。はるかな黎明《れいめい》の弱々しい明るみは、にわかに安らかな気を彼のうちにもたらした。だれもまだその明るみを闇と見分けることができないころ、彼はすでにそれが室の中に忍び込んでくるのを感じた。するとただちに、あふれた河水がまた河床のうちに引いてゆくように、彼の熱はさめ、彼の血は静まった。同じ温かさが身体じゅうをめぐり、不眠のため燃えるようになってる彼の眼は閉じていった。
 晩になると、彼はまた眠る時がやって来るのを見て震え上がった。悪夢の恐ろしさのあまり、眠りに負けず夜通し起きていようときめた。けれどしまいにはいつも疲労にうち負かされた。そしていつも思いも寄らない時に怪物がまた現われてきた。
 恐るべき夜! 多くの子供にはいかにも楽し
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