わたしは胸《むね》が苦《くる》しくって、歯《は》がガチガチする。それで脈《みゃく》の中《なか》では、火《ひ》が燃《も》えているようですわ。」
そういって、おかみさんは衣服《きもの》の胸《むね》を、ぐいぐいとひろげました。
マリちゃんは隅《すみ》ッこへ坐《すわ》って、お皿《さら》を膝《ひざ》の上《うえ》へおいて、泣《な》いていたが、前《まえ》にあるお皿《さら》は、涙《なみだ》で一ぱいになるくらいでした。
その時《とき》、鳥《とり》は杜松《ねず》の木《き》へ棲《と》まって、歌《うた》い出《だ》しました。
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「母《かあ》さんが、わたしを殺《ころ》した、」
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母親《ははおや》は耳《みみ》を塞《ふさ》ぎ、眼《め》を隠《かく》して、見《み》たり、聞《き》いたり、しないようにしていたが、それでも、耳《みみ》の中《なか》では、恐《おそ》ろしい暴風《あらし》の音《おと》が響《ひび》き、眼《め》の中《なか》では、まるで電光《いなびかり》のように、燃《も》えたり、光《ひか》ったりしていました。
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「父《とう》さんが、わたしを食《た》べ
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