しうす》をはめて、お父《とう》さんの家《うち》の方《ほう》へ飛《と》んで行《ゆ》きました。
 居間《いま》の中《なか》では、お父《とう》さんとお母《かあ》さんとマリちゃんが、食卓《テーブル》の前《まえ》に坐《すわ》っていました。その時《とき》、お父《とう》さんはこう言《い》いました。
「おれは胸《むね》が軽《かる》くなったようで、大変《たいへん》好《い》い気持《きもち》だ!」
「否《いいえ》、」とお母《かあ》さんが言《い》った。「わたしは胸《むね》がどきどきして、まるで暴風《あらし》でも来《く》る前《まえ》のようですわ。」
 けれどもマリちゃんはじっと坐《すわ》って、泣《ない》ていました。すると鳥《とり》が飛《と》んで来《き》て、家根《やね》の上《うえ》へ棲《とま》った。
「ああ、」とお父《とう》さんが言《い》った。「おれは嬉《うれ》しくって、仕方《しかた》がない。まるでこう、日《ひ》がぱーッと射《さ》してでも居《い》るような気持《きもち》だ。まるで久《ひさ》しく逢《あ》わない友達《ともだち》にでも逢《あ》う前《まえ》のようだ。」
「否《いいえ》、」とお母《かあ》さんが言《い》った。「
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