襯衣《シャツ》のまんまで、戸外《そと》へ駈出《かけだ》して、眼《め》の上《うえ》へ手《て》を翳《かざ》して、家根《やね》の上《うえ》を眺《なが》めました。
「鳥《とり》や、」と靴屋《くつや》が言《い》った。「何《なん》て好《い》い声《こえ》で歌《うた》うんだ!」
そう言《い》って、家《うち》の中《なか》へ声《こえ》をかけました。
「女房《にょうぼう》や、ちょいと来《き》なよ、鳥《とり》が居《い》るから。ちょいとあの鳥《とり》を見《み》な! いい声《こえ》でうたうから。」
 それから娘《むすめ》だの、子供《こども》たちだの、職人《しょくにん》だの、小僧《こぞう》だの、女中《じょちゅう》だのを呼《よ》びましたので、みんな往来《おうらい》へ出《で》て、鳥《とり》を眺《なが》めました。鳥《とり》は赤《あか》と緑《みどり》の羽《はね》をして、咽《のど》のまわりには、黄金《きん》を纒《まと》い、二つの眼《め》を星《ほし》のようにきらきら光《ひか》らせておりました。それはほんとうに美事《みごと》なものでした。
「鳥《とり》や、」と靴屋《くつや》が言《い》った。「もう一|度《ど》、あの歌《うた》を歌《
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