と、木々《きぎ》の梢《こずえ》が青葉《あおば》に包《つつ》まれ、枝《えだ》と枝《えだ》が重《かさ》なり合《あ》って、小鳥《ことり》は森《もり》に谺《こだま》を起《お》こして、木《き》の上《うえ》の花《はな》を散《ち》らすくらいに、歌《うた》い出《だ》しました。五|月《つき》経《た》った時《とき》に、おかみさんは、杜松《ねず》の樹《き》の下《した》へ行《ゆ》きましたが、杜松《としょう》の甘《あま》い香気《かおり》を嚊《か》ぐと、胸《むね》の底《そこ》が躍《おど》り立《た》つような気《き》がして来《き》て、嬉《うれ》しさに我《われ》しらずそこへ膝《ひざ》を突《つ》きました。六|月目《つきめ》が過《す》ぎると、杜松《ねず》の実《み》は堅《かた》く、肉《にく》づいて来《き》ましたが、女《おんな》はただ静《じっ》として居《い》ました。七|月《つき》になると、女《おんな》は杜松《ねず》の実《み》を落《おと》して、しきりに食《た》べました。するとだんだん気《き》がふさいで、病気《びょうき》になりました。それから八|月《つき》経《た》った時《とき》に、女《おんな》は夫《おっと》の所《ところ》へ行《い》って、泣《な》きながら、こう言《い》いました。
「もしかわたしが死《し》んだら、あの杜松《としょう》の根元《ねもと》へ埋《う》めて下《くだ》さいね。」
これですっかり安心《あんしん》して、嬉《うれ》しそうにしているうちに、九|月《つき》が過《す》ぎて、十|月目《つきめ》になって、女《おんな》は雪《ゆき》のように白《しろ》く、血《ち》のように赤《あか》い小児《こども》を生《う》みました。それを見《み》ると、女《おんな》はあんまり喜《よろこ》んで、とうとう死《し》んでしまいました。
夫《おっと》は女《おんな》を杜松《としょう》の根元《ねもと》へ埋《う》めました。そしてその時《とき》には、大変《たいへん》に泣《な》きましたが、時《とき》が経《た》つと、悲《かなし》みもだんだん薄《うす》くなりました。それから暫《しばら》くすると、男《おとこ》はすっかり諦《あきら》めて、泣《な》くのをやめました。それから暫《しばら》くして、男《おとこ》は別《べつ》なおかみさんをもらいました。
二|度目《どめ》のおかみさんには、女《おんな》の子《こ》が生《う》まれました。初《はじめ》のおかみさんの子《こ》は
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