えていた。
正直に自分の姓名と職業とを明かした上で、わたしはかの貸間の家に何かの祟りがあるらしく思われるということを話した。そうして、わたしはぜひその家を探険してみたいから、ひと晩でもいいからどうぞ貸してくれまいか。それを承知してくれれば、お望み通りの金を払うと言った。
J氏はそれに対して、非常に丁寧に答えた。
「よろしゅうございます。あなたのご用の済むまでお貸し申しましょう。家賃などはどうでもかまいません。あの婆さんは宿《やど》なしの貧乏人で養育院にいたのを、わたしが引き取って来たのです。あの婆さんは子供の時にわたしの家族のある者と知り合いであったと言いますし、またその以前は都合がよくって、わたしの叔父からあの家を借りて住んでいたこともあるというので、それらの関係からわたしが引き取って番人に雇っておいたのですが、可哀そうに三週間前に死んでしまいました。あの婆さんは高等の教育もあり、気性もしっかりした女で、わたしが今まで連れて来た番人のうちで無事にあの家に踏みとどまっていたのは、あの女ばかりでした。それが今度死んで、しかも突然に死んだものですから、検視が来るなどという騒ぎになって、
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