あろうという考えが、同時に二人の胸に浮かんだので、わたしはまずその部屋へ駈け込むと、Fもつづいた。
そこは家具もない、なんの装飾もない、小さい部屋で、少しばかりの空き箱と籠《かご》のたぐいが片隅にころがっているばかりであった。小さい窓の鎧戸《よろいど》はとじられて、火を焚くところもなく、私たちが今はいって来た入り口のほかには、ドアもなかった。床には敷物もなく、その床も非常に古くむしばまれて、そこにもここにも手入れをした継ぎ木の跡が白くみえた。しかもそこに生きているらしい物はなんにも見えないばかりか、生きている物の隠れているような場所も見いだされなかった。
私たちが突っ立って、そこらを見まわしているうちに、いったんあいたドアはまたしずかにしまった。二人はここに閉じこめられてしまったのである。
二
私はここに初めて一種の言い知れない恐怖のきざして来るのを覚えたが、Fはそうではなかった。
「われわれを罠《わな》に掛けようなどとは駄目《だめ》なことです。こんな薄っぺらなドアなどは、わたしの足で一度蹴ればすぐにこわれます」
「おまえの手であくかどうだか、まず試《ため》して
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