に立っているのである。
 さてあなたに、ヴィール夫人は三十歳ぐらいの中年増《ちゅうどしま》のわりに、娘のような温和な婦人であったが、数年前に人と談話をしているうちに突然発病して、それから痙攣《けいれん》的の発作に苦しめられるようになったということを知っておいてもらわなければならない。彼女はドーバーに家《うち》を持っていた、たった一人の弟の厄介になっていた。彼女は非常に信心の厚い婦人であった。その弟は見たところ実に落ち着いた男であったが、今では彼はこの物語を極力打ち消している。ヴィール夫人とバーグレーヴ夫人とは子供のときからの親友であった。
 子供時分のヴィール夫人は貧しかった。彼女の父親はその日の生活に追われて、子供の面倒まで見ていられなかった。その当時のバーグレーヴ夫人もまた同じように不親切な父親を持っていたが、ヴィール夫人のように衣食には事を欠かなかったのである。
 ヴィール夫人はよくバーグレーヴ夫人にむかって、「あなたはいちばんいいお友達で、そうして世界にたった一人しかないお友達だから、どんな事があっても永久に私はあなたとの友情を失いません」と言っていた。
 彼女らはしばしばお互
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