世界怪談名作集
ヴィール夫人の亡霊
デフォー Daniel Defoe
岡本綺堂訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)敬虔《けいけん》な
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 この物語は事実であるとともに、理性に富んだ人たちにも、なるほどと思われるような出来事が伴っている。この物語はケント州のメイドストーン治安判事を勤めている非常に聡明な一紳士から、ここに書かれてある通りに、ロンドンにいる彼の一友人のところへ知らせてよこしたもので、しかもカンタベリーで、この物語に現われて来るバーグレーヴ夫人の二、三軒さきに住んでいる上記の判事の親戚で、冷静な理解力のある一婦人もまたこの事実を確証している。
 したがって、治安判事は自分の親戚の婦人も確かに亡霊の存在を認めているものと信じ、また彼の友達にも極力この物語の全部はほんとうの事実だと断言している。そうして、その亡霊を見たというバーグレーヴ夫人自身の口から、この物語を聞いたままを治安判事に伝えたその婦人は、正直で、善良で、敬虔《けいけん》な一個の女性としてのバーグレーヴ夫人が、この事実談を一つの荒唐無稽《こうとうむけい》な物語に粉飾するような婦
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