に神のごときものであったと信じているのではないか。彼女の二つの大いなる使命は、逆境にあるバーグレーヴ夫人を慰藉《いしゃ》するとともに、信仰の話で彼女を力づけようとした事と、疎遠になっていた詫びを言いに来た事とであった。また仮りに、何か複雑の事情とか利益問題とかいうことを抜きにして、バーグレーヴ夫人がヴィール夫人の死を早く知って、金曜の昼から土曜の昼までにこんな筋書を作りあげたものと想像してご覧なさい。そんな真似をするような彼女であったらば、もっと機智があって、もっと生活が豊かで、しかも他人が認めているよりも、もっと陰険な女でなければならないはずである。
私はいくたびかバーグレーヴ夫人にむかって、確かに亡霊の上着に触れたかどうかを糺《ただ》してみたが、いつも彼女は謙遜して、「もしも私の感覚に間違いがないならば、私は確かにその上着に触れたと思います」と答えるのであった。それからまた、亡霊がその手で膝をたたいた時に、確かにその音を聞いたかと訊ねると、彼女は聞いたかどうかはっきりとは記憶していないが、その亡霊の肉体は自分とまったく同じものであったと言った。
「それですから、私の見たのはあの人
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