でしょうが、あとであなたにもわかる時があります」
 そこで、バーグレーヴ夫人は彼女の懇願を容《い》れるために、ペンと紙とを取りに行こうとすると、ヴィール夫人は、「今でなくてもよろしいのです。私が帰ったあとで書いてください、きっと書いて下さい」と言った。別れる時には彼女はなお念を押したので、バーグレーヴ夫人は彼女に固く約束したのであった。
 彼女はバーグレーヴ夫人の娘のことを尋《たず》ねたので、娘は留守であると言った。「しかし、もし逢ってやって下さるならば、呼んで来ましょう」と答えると、「そうして下さい」と言うので、バーグレーヴ夫人は彼女を残しておいて、隣りの家へ娘を探しに行った。帰って来てみると、ヴィール夫人は玄関のドアの外に立っていた。きょうは土曜日で市《いち》の開ける日であったので、彼女はその家畜市のほうを眺めて、もう帰ろうとしているのであった。
 バーグレーヴ夫人は彼女にむかって、なぜそんなに急ぐのかと訊《たず》ねると、彼女はたぶん月曜日までは旅行に出られないかもしれないが、ともかくも帰らなければならないと答えた。そうして、旅行する前にもう一度、従兄弟《いとこ》のワトソンの家でバ
前へ 次へ
全24ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
デフォー ダニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング