なず》いて、
「うん。それでこそ、死んだ二人の科学者の、恩に報いられるのだ。しっかりやってくれ」
「はい」「はい」海軍機は、すでに、魔の海――大渦巻の上空を去って、夕靄《ゆうもや》の深く鎖《とざ》した大海原《おおうなばら》を、西方指して飛んでいる。
「大尉殿」僕は、訊ねた。
「何だ」
「この海軍機は、ドイツから輸入したのですか」
「いや、国産だよ」
「へえ、素晴しいなア。こんな優秀機が、もう日本でも出来るンですか」
「出来るとも。もっと素晴しいのが出来かかっているよ。これは、東京帝国大学の航空研究所で設計したものだ。太平洋なぞ、無着陸で往復できるよ」
「ほう、愉快だなア」
「小僧たちも、うんと勉強して、これに負けない飛行機をつくってくれよ」
「つくるとも。大丈夫」
「何だぜ。もう、どろぼう[#「どろぼう」に傍点]船になンか、乗るんじゃないぜ」
「あれは、横浜《ハマ》で、船乗《マドロス》たちに騙《だま》されたのだよ。もう、北洋へなぞ往かずに、うんと勉強するよ」
「よし。陳《チャン》君、君も、うんと勉強したまえよ」
「はい」
「中国も、日本と協力して、もっと強くならなくてはいかんなア。東洋
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