…大鳴門の所在を探し廻ったが、なかなか発見できない。
「何だ、小僧。大渦巻なンか、この近海にありゃしないじゃないか」
「でも、たしかに僕等が、そこを脱《ぬ》けて来たのです」
「夢でも見たんじゃないか」
「そんなことは、ありません」
「とにかく、もう少し探し廻ろう。暗くならないうちに探し当てなければ、救助が出来ないからなア」
 なおも、低空をつづけているうちに、何処《どこ》からか、ごうごうという物凄い音がきこえて来た。
「それ、閣下、大鳴門《おおなると》の音です」
 僕はまた、閣下といってしまった。
「ほいまた閣下かい。ハハハハ。おおなるほど、凄《すさ》まじい音だな。ああ、大渦巻だ」と、叫んで下界を見おろした。なるほど一海里平方もあろうという面積の海上が、大きく、烈しく、凄じく、渦を巻いている。外側はゆるやかに、中心になるにしたがって、急速度に、水がぐるぐる渦巻いている。
「おお、これは壮観」
「こんなところに、こんな難所があるとはおもわなかった」将校も、操縦の下士も、あまりの物凄さに、暫《しば》し見惚《みと》れた。
「はやく、博士たちを救って下さい」
「はやくしないと、死んでしまいます
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