けてあげたいとおもっている」
「そうだな。何とか、この辺で、飛行機にでもめっからないかな。そうすると、飛行機の人に救助して貰うンだが……」
「そんな旨《うま》い具合にいくものか」
「でも、運命って奴《やつ》は、わからんよ。こうして漂流しているうちに、ひょっとして、この上空を飛行機が通らぬとも限らんよ」
「夢みたいな話さ」
「そうかなア」二人は疲労のためにうとうとした。
と、意外意外、それから数時間ののち、その日の夕方、僕等の漂流する上空はるかに、壮快な飛行機のプロペラの音がきこえはじめたではないか。「あッ! 飛行機だ」
「そら見ろ。とうとうやって来たではないか。万歳! 万歳」
僕は、雀躍《こおどり》して叫んだ。
空《むな》しい救助
僕等を救助した飛行機は、祖国日本の大型海軍機だった。
遠洋における耐空試験をやっていて、奇妙な革船に乗って漂流する僕等を発見したわけだ。
やさしい海軍の飛行将校たちは、僕等を救助し、飛行機に乗っけてくれたばかりでなく、いろいろ珍しい携帯糧食を、頒《わか》ち与えてくれた。固型|寿司《ずし》や、水玉のように、ごむ袋の中に入った羊羹《ようか
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