すぐに大きな鞄《かばん》を提げて現われた。五ツの屍骸《しがい》に、ガラスのような瞳《ひとみ》を投げながら、
「どいつを、料理《まかな》ってやろうかな」
 と、呟《つぶや》いた。いよいよ不気味なことを云う。
 鞄の中から、いろんな怪しい道具を取出した。それは外科手術用の鋸《のこぎり》や、メスや、消毒剤などだ。メスを握り、白衣《びゃくえ》の腕をまくり、大男の屍骸に居ざりよって、
「久しぶりで、肉を裂くのか。堪《たま》らないなア」
 と、またも呟いた。おお、怪老人は、メスを揮《ふる》って、大男の肉を裂き、肉を啖《くら》おうというのか。
 怪老人は、大男の屍骸の胸をひろげ、左胸部のあたりに、ぐさりメスを突立て、肉を抉《えぐ》り取ったが、それを、一口に啖うと見ていると、そうではなく、なおもメスを突立て、まもなく、大男の血の滴る心臓をつかみ出した。
「なかなか見事見事」それを片手に持って眺め廻したが、こんどは、陳《チャン》君の屍骸《しがい》に居ざりより同じように、胸をはだけ、左胸部にメスを突立てた。手を入れて、つかみ出したのは、銃弾に射貫《いぬ》かれて、めちゃめちゃに砕けた陳君の心臓だった。
「ほ
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