けて、動力所へ入って来た一隊の半数は、いきなり、老博士に殺到した。
「わア!」
「老ぼれを殺《やっ》つけろ[#「殺《やっ》つけろ」は底本では「殺《や》つけろ」]」
 たちまち、老博士は、人々のために組敷かれてしまった。あとの半数は、僕を目指して殺到した。
「日本の少年も、やっつけろ」
「わア!」僕は飛鳥の如《ごと》く、動力機関の前までのがれた。僕は、もはやこれまでとおもって、その場にあったハンマーを執《と》ると、
「やッ!」とばかり、機関を叩きつけた。
「あッ!」殺到した悪鬼のような人々は、おもわず声を呑《の》んだ。おのれの心臓を、叩きつけられたも同然である。僕は、続けざまにハンマーを揮《ふる》って機関《エンジン》を叩きつけた。歯車は砕け、シャフトは折れ、低温蒸気は、凄《すさ》まじい勢いで、折れまがったパイプの裂け口から吹き出した。僕は、汗を拭《ふ》きながら、人々を振《ふり》かえって云った。
「さア、これで万事休矣《ばんじきゅうす》だ。敵も味方も、仲好く、海底見物をしよう。動力が停ったら、この島は、次第に溶けていくだろう。もう、お互に争うことを止めようじゃないか」
 誰も、これに応える
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