飛行機は、あのとおり無惨な姿になってしまったから、いくら暴れても、この島を脱《のが》れることは出来ないだろう。どうだ。和睦《わぼく》せぬか。心臓部を握るわれわれと握手して、この人造島を、大陸へ向けて移動せしめることに同意せぬか」
戸外の人々は、なおも沈黙を守っている。
「それとも、われわれの手で、動力機関を破壊し、氷の島を溶かして、敵味方|諸共《もろとも》、海底の藻屑《もくず》となるか」敵の一隊は、今は進みも退きも出来ず、死のような沈黙をつづけている。
「君たちは、わしのつくった人造島が完成すると、もう、この老ぼれには用は無いというので、わしを、この島に残し、島の動力器械を持去ってしまうのだろうが、それは、あまり酷薄無道だった。君たちは、みんな、そんな残酷な人間ではないだろう。わしを信じ、わしの科学の才能を認め、わしになお、研究を継続させたいものは、銃を捨てて、これへやって来たまえ」
すると、先頭の一人は、銃を投げ出した。悄然《しょうぜん》と、こちらへ歩いてくる。すると、これに倣《なら》って、他の人々も銃を棄て、みなそのあとに続いた。
が、これは、こちらの油断だった。降服とみせか
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