無人島を荒し廻ろうというのだ。
虎丸《タイガーまる》が、パラムシロ近海を去って南下したのは、八月上旬だった。そして、数十海里南西のアブオス島に向った。この沿岸は、ラッコの棲息地《せいそくち》として名高いし、また洋上には、オットセイが、おびただしく群游《ぐんゆう》する。白人の密猟者にとっては、千島第一の猟場なのだ。
虎丸は、アブオス島沖に仮泊すると、いよいよ最後の密猟を開始した。五|艘《そう》の端艇《ボート》は、早朝から、海霧を破って猟に出かけるが、夜半には、いずれも満船して戻ってくる。船長はじめ、乗組員たちはハリ切っている。哀れな臨時雇の水夫たちも、あとで海ン中へ放り込まれるとは知らずに、やはりハリ切っている。
こうして、祖国の領海が、白人密猟者のために、さんざ荒されるのを傍観して、僕は、おもわず、腕を扼《やく》し、義憤の涙に瞼《まぶた》を濡らすのだったが、多勢に無勢、なんとも手の下しようがない。ある朝、船長はじめ、みんなが、相変らず猟に出かけたあとで、陳《チャン》君は、船長室からやってきて僕に耳打ちした。
「君、奴等《やつら》の密猟も、あと二、三日だぜ。いまのうちに何とかしない
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