えこそ、われわれ二人の部下じゃないか」陳君が、肩を聳《そびや》かすと、縮毛の大男は、大口開いて笑った。
「ワハ……。小僧、大きく出たな。だが、いくら力んでも、どうにもならんさ。この船の宝物は、乃公のものだ。絶対に手を触れることはならぬ」
「うぬ!」陳君は、隙《すき》をみて、縮毛の大男の右手を叩《たた》きつけた。
「あッ!」ピストルは、甲板に落ちた。僕は、素早くそれを拾おうとしたが、同時に荒鷲《あらわし》のような手がそれに伸びた。
「何を!」
「やるか」僕と、べつな水夫とは、野獣のように組打ちとなった。
「さア来い。小僧!」
「何を! 大僧!」
 陳君と縮毛の大男も、その場で格闘をはじめた。他の水夫たちも、これを傍観しなかった。二組の格闘のうえに、折重なって、烈《はげ》しい乱闘となった。
 が、二人は、衆寡《しゅうか》敵《てき》せず、忽《たちま》ち甲板上で、荒くれ水夫たちに組敷かれてしまった。
「太い小僧だ。銃殺にしろ。……いや、それよりか、一束にして、水葬にしてしまえ」
 縮毛の大男は、怒号した。
 水夫たちは、麻縄《ロープ》を持ってきて、僕と陳君を一緒にして、ぐるぐる巻にしてしまった
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