鎗がどうで、弓がこうでと、姉が自分のことを賞めたてるのを、娘は笑いながら自分の方を見つめて、その話を聴いていたが、聴き終ッてから、
「ほんとうに感心ですねエ、お少《ちい》さいのに」
 この一言は心から出たので,自分は賞められて嬉しく思ッた,的の黒星を射抜いて、えらいと人に賞められたよりは、この人に賞められたのを嬉しいと思ッた。
「庭の方へ往ッて見ましょう。秀さんもおいで」
 姉と娘との間に立ッて、自分は外庭の方へ廻ッて往ッたが、見つけた、向うの垣根《かきね》の下に露を含んで、さも美しく、旭光《あさひ》に映じて咲いていた卯《う》の花を見つけた。
「お姉さま、お姉さま、江戸のお姉さま! 御覧なさい。この花はね私が植えたのですぜ,植えたてには枯れかかッたけれど、やッと骨折ッて育てたのです。奇麗でしょう?」
「おやまア奇麗! 花もお好きなの? 武芸もお好き?」と言ッて白い手を軽く自分の肩へ掛けて、ちょっと揺すッてそして頭を撫でたが、不思議にも、その手が触《さわ》ると自分の胸はさわぎ出した、がそれを見られまいと急いで、
「花は白い方が奇麗ですねエ、赤ッぽいのよりか」
「そうですね、淡白《あッさり
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