ならしいやつ、それから前が土間になッていて、真中に炉が切ッてあろうという書割《かきわり》。
母と、森と、勘左衛門の三人が三鉄輪《みつがなわ》に座を構えて、浮世|雑談《ぞうだん》の序を開くと、その向うでは類は友の中間《ちゅうげん》同志が一塊《ひとかたまり》となッて話を始めた,そこで自分は少し離れて、女中連の中へはいり込み、こちらの一方へ陣取ッた。
「秀さん」娘は笑いながら、「あなたどのくらい採りました、お見せなさい。おやたったそれきり、少ないことねエ,私の方が多うございますよ,そウら御覧なさい、勝ちましたよ私の方が」
自分はこの時姉がその身の採ッたのを娘のと一しょにしたところを見た。
「ああ、ずるいずるい、家の姉さんのを混ぜたのだもの」
「あら、あんなこと。ほほほほ混ぜはしませんよ」
「いいえ、混ぜました、混ぜましたよ,見ていましたからね」
「あら。まア、卑怯《ひきょう》な、男らしくもない、負けたものだからそんなことを」
そのうちに渋茶がはいると、かねて中間に持たせて来た鮓《すし》を今日の昼食として、なお四方山《よもやま》の話をしていた。
その時勘左衛門の話に、このひょうきん者が
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