だらうかなう?」
「なんぼ足が早いつたつて、十万億土つていふから、さうは行かれめえてば。」
「なあに、さうでねえと。瞬《まばた》きしるかしねえうちに向ふへ行きつくもんだつてこんだ。」
「そんな事だつたら、何で脚絆《きやはん》だ、草鞋《わらぢ》だつて穿《は》かせてやることがあらうば。」
「七日七夜の間は、魂が、まだ家のまはりに止つてゐるもんだつてこんだよ。」
「さうだかも知れねえ。」
「どれが当つてゐるか、坊様にお尋ね申してみるが、いつちいゝ。」
話の波が、また中央《まんなか》へ復《かへ》つて来た。が、頭を青々と剃立《そりた》てた生若《なまわか》い坊さんは、勿体《もつたい》ぶつた顔にちよいと微笑を浮べただけで何とも答へなかつた。
しかし、そんな事には一向|頓着《とんぢやく》なく、別な新しい話が、もう、別なところで持ち上つてゐた。
「爺さんな、わるくすると、地獄街道をどん/\行つてしまつたかも知れねえてば。」
「なんしてや?」
「極楽の道は人通りがすくねえんで草だらけだつてこんだからなう。」
「呑気《のんき》もんだから、そんなことに気がつかれめえも知れねえ。」
「さうだてば、真直《まつ
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