夢
相馬泰三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)嵐《あらし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)暫時|可笑《をか》しさ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)きちん[#「きちん」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
そとは嵐《あらし》である。高い梢《こずゑ》で枝と枝との騒がしくかち合ふ音が聞える。ばら/\と時折り窓をかすめて落葉が飛ぶ。だが、それ等は決して、老医師の静かな物思ひのさまたげにはならなかつた。天井の高い、ガランとした広い部屋の中の空気はヒヤ/\と可成《かなり》冷たかつたが、彼は大きな安楽椅子《あんらくいす》に身を深く埋めてゐたから、それも平気であつた。それに物思ひと云つても、それは彼のこれまでの忙はしい生活に附きまとうてゐた様な、そんな種類のものとは全く趣きを異にした極《きは》めて呑気《のんき》な、責任などと云ふものから全く離れたものであつた。
膝《ひざ》の上にきちん[#「きちん
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