。「……とても我慢ができるものか。こうなっては、もう一刻もそのままにさせて置くわけにゆかない。どんな方法をしても、……ピストルでも放すほかはない。……よろしいとも!」こんなふうに考えるほど激昂した。
「今日、これからすぐに駐在所へ誰かをやって下さい。そしてお巡査《まわり》さんに今晩からよく見廻りして貰うようにして下さい。」こう云って父親に迫った。
「そんな事を云ったって、こんな大きな村に巡査が一人しかいないのだから、とてもそんな事まで手が届くものではないよ。」と、父は笑いながら云った。
「いゝえ、そんな事ってありません。それじゃ、警察署へ云ってやって大勢応援して貰えばいいでしょう。」
「ところが、こんな事はこの村ばかりというのではないからね。どこもここも一帯にそうなんだから。」
「それだからと云って、そんな……そんな、」
「房子、そんなにお前のように心配したものでもないよ。家の者にはどんな事があっても手出しなんかしやしないのだから、召使いの者共にほんのちょいと調戯《からか》ってみるだけなのだよ。」
「いゝえ、いゝえ、放って置くという法はありません。決して。……まったく許す事のできない悪
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