なんてことは、大体があまり結構なものではありませんね。」こんな事を云った。
こんな話しの出る席には、彼の母も加っているのが常であった。庸介のこの言葉は彼の母の心をぎゅっ[#「ぎゅっ」に傍点]と荒らく掴《つか》んだ。彼女はすぐに、
「なぜだい。しかし、やむを得ない時にはね。」と云わないではいられなかった。
続いて父が問うた。
「ほかに何か名案でもあるというのかい。」
「しかし、そんな不自然な事をしたって、結局、いたずらに複雑と面倒臭さとが殖えるばかりじゃありませんか。」庸介は何の気もなくこんなふうに答えるのであった。
「と云って、この先、それではこの家はどうなって行くのだい。」父が重ねて問うた。
「その時には、またその時にする事があるでしょう。」
「と、いうと?」
「さあ。」
黙って考に沈んでいた母が、この時、悲しそうな顔をして、
「つまり、お前のような事を云えば、この屋敷はしまいには畑になって行ってもかまわないと云うようなものではないかね。」と云った。
「そうかも知れませんね。……しかし、どんな事があろうとも、あなた方の生きておいでの間はそんな事をしない方がいいでしょう。」
「馬
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