出をする一年前に持った唯一の子供であったので、それに養子婿をさせて……という事に親族会議でほぼ定められてあるのであった。
「養子と云ったところで、立派な教育のしてある者は、なかなか、手離そうという親もなし、それに本人にしても、そんな事はあまり望むものでもなしさ。……それだから、性質の良さそうなものを今のうち貰い受けて、こっちの手で教育しようかと思うているのだよ。……この隣り村に一人気に入った子供があるのだが、両親が承知してくれれば良いがと思うているのだ。」こんなふうに云い出すのであった。
「やはり医者がよかろうと思うのだ。とにかく、こうしてこれまでやって来たのだし、このままあとを絶やすのも惜しいと思ってね。それに、そうなれば私もいっしょにやる人ができてどんなに好都合だか知れやしないしね。」
「は。」
「あの子も、来年はもう十三歳になるんだ。あと二年で女学校へ入るだろうし、それから四年するともう卒業するのだ。月日の経つのはほんとに早いものさ。そういうている内についそんな時がやって来るのだ。」
「は。」
庸介は、父の考え方と自分の考とがひどく違っていることを思うた。ある時、彼は、
「養子
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