て迷を去らねばならぬ。そしてもっとも正しい生活に入る事を思わねばならぬ。そうすれば不安や恐れが無くなるのであろう。間違がないという事より強い事はない。泰然として他の何物からも煩《わず》らわされるという事がなくなるであろう。」
「それからまた、我々は高尚にならねばならぬ。滅《ほろ》び易き形や物に淡くなり、永く続くであろうところの心と美とは濃くなってゆく事が必要である。こういう風にして初めて限りもなく都合の良い友情とか善意とかいうものが広く成り立つのである。そうなれば、自分一個人だけではなく、我々の住んでいる社会全体がいかにも滑《なめ》らかに滞《とどこお》りなく愉快なものとなるであろう。」
また、老医師はいうたであろう。
「決して一人という事を思うべきでない。人間はそれを取囲む雰囲気が必要である。それだから各人が「自分だけの都合、勝手という考からできるだけ慎み合わなければいけない。そしてめいめいが、できるだけ、悪るい影、悪るい臭気、悪るい響、こういうものを自分から発せしめないように努むべきである。そうではないか。」
これらの事は、みんないつも順序がきちん[#「きちん」に傍点]と定まって
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