心になり得た場合にはこの偉大なる望みと結び附くことです。私があなた方にお勧めしたいのは実にこの事です。そういうと、何かあなた方に対して失礼なようではありますが、自分自身が偉くなろうと思うよりは、むしろ、皆様女の方は、自分の子供を偉いものにしたいと云う事を志して頂きたいのです。……できるだけ多くの女の方が、……そこにこそ本当の『限りなき前途』があるのです。……もちろん、それがためには自分自身をも修養しなければなりません。されば、どうぞあなた方は自分の処女時代をその修養のために、そうです。立派な母となる準備のために費すようにして頂きたいと思うのです。……とにかく、……いずれにしても、いかなる場合に立到っても前途の望みを捨てるような事のないように、これだけは特によく記憶して置いて頂きたいのです。それでは、私は、『あらゆる罪悪は、まったき絶望よりのみ生ず。』こう申して置きましょう。」
 房子は、これをいつまでも忘れなかった。その後、幾度となくその言葉を自分の心の中で繰り返してみた。そのたびごとに彼女はそれに少しも不同意を持ち得なかった。それにもかかわらず、例の測り難き欝憂と退屈とは依然として消
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