ンテ「神曲」中「天國篇」を見よ。
(二)セークスピアの故郷の川。
(三)ヲルヅウヲルス住所の傍にありし湖。
(四)プロテアス及びトライトンを指す、有名なる“The World is too much with us”の歌を見よ。
(五)「チヤイルド・ハロード」第三篇第五十章及其續きを見よ。
(六)ラマルテーン此處にバイロンを見後日當時を追想して「人間」と題する沈痛悲壯の詩を詠ず。
(七)セレイの“Stanzas written in dejection, near Naples.”
――――――――――
[#ここで字下げ終わり]
岸邊の櫻
春靜かなる里川の
岸のへ匂ふ花櫻
水面の影にあこがれて
涙灑げる幾たびか。
おのが影とも花知らず
光のどけき朝日子に
姿凝らして水面を
あゝ幾度か眺めけむ。
影ものいはじ水去りて
いつしか老ゆる花の面
うつらふ色を眺めては
思やいかに夕まぐれ。
春も空しく暮去れば
梢離れてあゝ花よ
水面の影と逢ひながら
行くゑはいづこ末遠く。
花一枝
ラインの岸に花摘みて
別れし友に贈りけむ
詩人を學びわれもまた
君に一枝の夕ざくら。
あしたの柳露にさめ
ゆふべの櫻風に醉ふ
都の春の面影を
せめては忍べとばかりに。
通ふ鐵路も末遠く
都の春は里の冬
玉なす御手に觸れん前
萎み果てむかあゝ花よ。
萎み果てなむ一枝を
空しく棄てむ君ならじ
心の色に染めなして
寢覺の窓にゑましめよ。
――――――――
夏の面影
夢
韓紅の花ごろも
燃ゆる思とたきこめし
蘭麝の名殘匂はせて
野薔薇散り浮くいさゝ川
流の水は淺くとも
深し岸邊の岩がねに
結ぶをとめの夏の夢。
よその高峯の夕霞
何にまがへてたどりけん
羅綾のしとね引換へて
今は緑の苔むしろ
水とこしへに流去り
花いつしかと散りぬれば
夢か昨日の春の世も。
のぼる朝日に照りそひて
色なき露も色にほふ
眺めまばゆきあさぼらけ
若葉のみどり夏深き
梢はなるゝもゝ鳥は
我世たのしと鳴くものを
さめずやあはれをとめごよ。
鳴くや杜鵑《とけん》のひと聲に
五月雨いつかはれ行けば
ちぎれ/\の雲間より
やがてほのめく夏の月
銀輪露に洗はれて
我世すゞしとてるものを
さめずや哀れをとめごよ。
螢飛びかふ夕まぐれ
すゞ風そよぐ夜
前へ
次へ
全27ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
土井 晩翠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング