げ]
『宇宙に三兒がある、知る者、行ふ者、言ふ者、即ち眞を愛するもの、善を愛する者、美を愛する者、――三者は同等である。詩人は言ふ者で、美を代表する、……詩人は副王でない、自個の權に於て帝王である、……俗人は只行爲活動を尚び、爲さずして曰ふ者を排斥する、詩人が言者で、述言の爲めに此世に下されたことが分らない。ホーマアの言の尊いのは、アガメムノーン(希臘の英雄)の勝利の尊いのと同樣である。詩人は英雄を待たない、聖人を待たない……』
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ユーゴーのは「光と暗」(一千八百四十年刊行)の序全部で、例の如く飽く迄も意識的に自己の抱負を述べたものである。
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『……(完美の詩人は)係累が無い、桎梏が無い、意思と行爲と共に等しく自由である、……一切の艱難を憐むに於て自由である。一切の敬信を尊ぶに於て自由である。……自然界の中に生き、活世界の中に住み、……好友として原野に春を眺め、玉樓に王侯を望み、獄裏に囚人を見る……』
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詩及び詩人に對する是等の評に對して、私は今日も何等反對すべきものを見出さない。
明治卅三年正月、故郷仙臺にあ
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